仕事や運動、家事など人によって原因は様々ですが、腰痛を感じたことがない人はいないでしょう。早い人では、10代20代からでも腰痛との付き合いが始まります。
そんな時、ありがたいのが整体やマッサージのお店。マッサージチェアや温泉よりもやっぱり人の手でマッサージしてもらうのが一番気持ちいいものですよね。
実際にマッサージを受けて思うのは、一体どうやってこんなに気持ちよく、そしてしっかりと腰痛の筋肉を押したり揉んだりしているのか。
プロの腰痛マッサージの施術を詳しく解説していきますので、自宅でお父さんやお母さんの腰をマッサージしてあげたり、整体やリラクゼーションマッサージ業界で働く人はプロの技術をさらに高める参考にしてみて下さい。
目次
腰痛マッサージにおいてまず覚えてほしいのが、腰方形筋、脊柱起立筋、大腰筋の3つの腰の筋肉です。これらの筋肉は慢性的な腰痛の人が必ず硬くなっている筋肉なので、なにはともあれマッサージして柔らかくする必要があります。
それぞれの筋肉の特徴と場所、マッサージのやり方を覚えて3つの筋肉ごとのほぐし方を覚えましょう。
3つの筋肉の中でも、大腰筋のマッサージは難易度が高く整体やマッサージのプロでも触らない施術者はたくさんいます。整体やマッサージ業界で働いている人は、是非、大腰筋のマッサージを覚えて他の施術者とスキルの差をつけましょう。
腰方形筋は骨盤上部から第十二肋骨、第1から第4肋骨突起に掛けて付いている筋肉で、背中を横に曲げる動きや(体幹側屈)背中を後ろに反らす(体幹伸展)際に働く筋肉です。
背中を横や後ろに反らさないと動かないので、デスクワークなどで座りっぱなしや運動不足が続くと硬くなって腰痛を引き起こします。
施術者はお客さんの真横に立ち、親指を腰方形筋に対して真っ直ぐ縦に刺し込み圧を掛けます。一度押し込んだら、六拍子を目安に圧を掛け続けましょう。
お客さんの体が軽く揺れる程度にリズムよく圧を加えます。あまり激しく揺らすと、痛すぎたり筋肉が緊張してしまうので、ゆっくりと風に揺らぐカーテンのようなイメージを持って行ってください。
脊柱起立筋は背骨に沿って付いているたくさんの筋肉の総称です。ここでは、腰痛に関わる腰についている脊柱起立筋である胸最長筋(きょうさいちょうきん)と腰腸六筋(ようちょうろっきん)を指します。
胸最長筋は仙骨、腰椎の棘突起(きょくとっき)から胸椎の横突起すべてに渡って付着している、とても長い筋肉。後ろに背中を反らす動作や、横に反らす動作で働く筋肉です。
腰腸六筋は、骨盤の腸骨陵の外側から仙骨にかけて始まり、第6から第12肋骨の後面まで伸びている、これまた長い筋肉です。胸最長筋と同じく、後ろや横に背中を反らす役割をしています。
いずれも背骨に沿って付いている筋肉なので、上から真下に押す必要があります。ポイントは、背骨のアーチを意識してマッサージすること。
背骨は真っ直ぐではなくS字のアーチを描いていますから、そのアーチに沿って親指に角度を付けて押していくとしっかりと圧が届いて、ほぐれていきます。
大腰筋は全腰椎の肋骨突起から大腿骨の内側(小転子)に掛けて繋がっている筋肉。腰から骨盤の内側を通って太ももの付け根まで伸びている、腰痛に深く関わる筋肉です。
脚を前に振り出す働きをする、スポーツなどの運動では欠かせない筋肉です。
インナーマッスルとして昨今非常に注目されており、いくつになっても元気に動き回るには不可欠な筋肉です。
骨盤内側を通っている大腰筋をマッサージするには、うつ伏せではなく仰向けで行います。左右どちらかの膝を45度を目安に立てたら脚を固定する為に、施術者の足でお客さんの足を踏んで固定します。
おへそから太もも内側の大腰筋の停止部をかけて一直線のラインをイメージして押していきます。押す際は親指ではなく、四指を使います。
まずは軽めに圧を掛けていきお客さんの膝を左右にゆっくりと揺らします。その際に、大腰筋をきちんと押さえられていれば四指の指先に大腰筋の動きを感じることが出来ます。
感じなければ、位置を変えてもう一度膝を揺らし大腰筋を捉えましょう。
大腰筋のコリが酷いと押された際に激痛が走る時があるので、出来るだけゆっくりと圧を強め、強さ加減はお客さんと確認を取り合いながら慎重に調節しましょう。
大腰筋から腰痛マッサージを行うのはとても効くんですが、お腹から指を刺し込むのでお客さんが嫌がったり、お店で禁止されていたりもするのでやりたくても出来ないことがあります。
特に整体やリラクゼーションマッサージ業界に入ったばかりの頃は、敷居が高いのでチャレンジするのも勇気がいりますよね。
そこで、おすすめなのが大腰筋を触らずにほぐしていくやり方。後脛骨筋と呼ばれる足にある筋肉をマッサージすることで、腰痛に関わる大腰筋も緩んでいく素敵なマッサージのやり方です。
自分でマッサージも出来るのでセルフでの腰痛マッサージとしてもおすすめです。
詳しくは、大腰筋マッサージは足から!大腰筋マッサージの意外なコツ
基本となる腰の筋肉のマッサージを覚えたら、次は、骨盤です。骨盤の歪みはそのまま腰痛として現れます。
骨盤が歪むと重心も歪み、結果として、腰への負担が増して腰痛を引き起こします。
骨盤とは、寛骨と仙骨と尾骨で出来た骨です。骨なので歪むことはありません、しかし、この骨盤にはたくさんの筋肉がくっついており、それぞれの筋肉が引っ張り合い、そのバランスでポジションが決まっています。
つまり、骨盤にくっついてる筋肉の一部が強力に骨盤を引っ張ると、筋肉に引っ張られて歪んで見えてしまうのです。
骨盤が歪むと、あらゆる弊害が体に起こります。もちろん腰痛もその一つで、骨盤が歪んだ状態の姿勢は腰の一部の筋肉に負荷をかけ、その筋肉が硬くなっていき腰痛を引き起こします。
腰の筋肉への根本的な負荷の解消し、腰痛を解消するには骨盤への施術は必要です。
骨盤に付いている筋肉の中で、歪みを引き起こす原因となる筋肉は、お尻と太ももにあるハムストリングスと呼ばれる筋肉です。どちらの筋肉も大きくて強いので、コリ硬くなると骨盤を歪めて腰痛を引き起こす原因となります。
つまり、腰痛マッサージにおいて、次に押さえておくべきポイントは、このお尻とハムストリングスのマッサージです。
腰の筋肉が硬い人のほとんどが、お尻とハムストリングスも硬くなっています。腰のマッサージと併せて、お尻とハムストリングスもほぐすと腰痛マッサージの効果が倍増し、効き目も長持ちします。
さらに、お尻とハムストリングスが柔らかくなることで骨盤の歪みも解消されるので、骨盤の歪みが原因で起きていた腰痛以外の症状も緩和されることがあります。
ほぐしておいて損することはないので、しっかりと覚えていきましょう。
お尻には大小様々な筋肉がありますが、骨盤の歪みから腰痛に関わる筋肉として、特に押さえておきたいのが中殿筋と梨状筋です。
この二つの筋肉は、骨盤を支える上で重要な働きをしています。腰痛持ちの人のほとんどがコリ硬くなっているのでしっかりとマッサージする必要があります。
腰痛のほかに、坐骨神経痛と呼ばれる症状を引き起こすこともあります。
中殿筋は骨盤の外側の縁から大腿骨の大転子の尖端、いわゆる足の付け根にかけて付いています。
立っている時に骨盤を支え、歩行中など片足が浮いた状態のときにも骨盤が落ちないように支える筋肉です。
お尻は分厚い脂肪に守られています。その為、弱い圧のマッサージでは全然効きません。
そこで、指ではなく肘を使います。中殿筋のちょうど真ん中辺りに狙いをつけたら、肘を刺し込んでしっかりと圧を掛けて下さい。お尻には骨がないので、普段は肘を使わない施術者でもお客さんにケガをさせる心配はありません。
梨状筋は仙骨の前面から大腿骨大転子の尖端内側面に掛けて付いています。
歩く際の方向転換や、立った状態で体の向きを変える際の軸足の動きに関わる筋肉です。硬くなると腰痛の他、坐骨神経痛の原因にもなります。
梨状筋も中殿筋と同じく、弱い圧では効きません。肘を使ってマッサージを行います。
狙うポイントは、お尻の一番高い所から脚の付け根、腰を結んだ三点のちょうど中心部分、その辺りにコリが出来やすいのでマッサージの際の目安にしてみて下さい。
ハムストリングスは、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋という3つの筋肉の総称です。いずれの筋肉も骨盤の下部にある坐骨結節から始まり、脛の内側である脛骨や腓骨まで伸びています。
主に、走る際に働く筋肉で前方に足を振り出す際の膝下にブレーキを掛ける役割もあります。
骨盤の下部に付着しているので、コリ硬くなると骨盤を後ろに引っ張って後傾させてしまいます。
3つに分けられるハムストリングスはマッサージのやり方も3つの筋肉それぞれ、真ん中、内側、外側と使い分けます。いずれも大きくて強い筋肉なので指ではなく、手根部分を使ってマッサージするのがおすすめです。
真ん中にある半腱様筋は真下に、内側の半膜様筋は内側へ絞り込む様に、外側の大腿二頭筋は外側へ開くように押しましょう。
外側にある大腿二頭筋は、痛みを感じやすいので強さ加減に注意して行ってください。詳しくは、ハムストリングをマッサージ!ハムストリングの3つのツボ
基本の腰痛マッサージと骨盤の歪みにもアプローチできたら、最後は、ツボを押して腰痛マッサージの仕上げをしましょう。
腰痛に効く全ツボは全身たくさんありますが、これまでに腰、お尻、ハムストリングスとマッサージしているので下半身はバッチリです。
そこで、最後は手と足にある腰痛のツボを押しましょう。いずれも、腰痛に効果抜群のツボなので腰痛マッサージの仕上げにおすすめです。
腰痛のツボマッサージについて詳しくは、腰痛マッサージは腰だけじゃない!腰に手と足のツボ押しマッサージが効く
腰腿点(ようたいてん)は手の甲側の人差し指と中指の筋の間と、薬指と小指の筋をたどり、甲の1/3ほどにある2つのツボです。
慢性的な腰痛や魔女の一撃と呼ばれるぎっくり腰にも良く効きます。押し方は自由ですが、手の甲を包むように両手で持って両方の親指で押すと押しやすいです。10秒間くらいを目安で押して下さい。
男性の施術者が女性の小さな手を押す場合など、指がツボにうまくフィットしない時は、親指ではなく人差し指を使って押すとツボにはまりやすくなります。
もしも、自分がぎっくり腰になったら腰を動かすことはしばらく出来ませんから、このツボをガンガン自分で押してセルフケアしましょう。
崑崙(こんろん)は外くるぶしの頂点からアキレス腱の方に進み、アキレス腱とぶつかる境目のところにあるツボです。
腰痛がひどい人は、崑崙周辺が腫れ上がっていることがあります。強さ加減に注意しながら優しく押しましょう。
腰のマッサージの基本は、腰方形筋、脊柱起立筋、大腰筋をほぐすこと。脊柱起立筋は腰椎のアーチに沿って押すと効くので指の角度を意識すること。
大腰筋のマッサージは仰向けで行い、四指を使ってお腹に指を刺し込む様に行うので難易度が高い。出来ない時は、脚にある後脛骨筋をしっかりとほぐすことで大腰筋を緩めることが出来る。
骨盤の歪みは腰痛と直結するので、腰痛マッサージの際に必ず併せて行うこと。中殿筋と梨状筋、ハムストリングスが硬くなると骨盤を引っ張り歪めるので、それらの筋肉をマッサージする。
お尻は分厚い脂肪があるので肘でしっかりと圧を掛けてマッサージするがおすすめ、ハムストリングスは3つの筋肉に併せて3パターンのマッサージをする。骨盤の歪みをなくすことで、腰痛マッサージの効果が長持ちする。
仕上げに、手と足にある腰痛のツボをしっかりと押すと腰痛マッサージはバッチリ。